傘が無い。

ぶらっと歩いていたら、雨が降ってきた。


100円ショップで傘を買った。
ショッピングセンターの出口に中学生の女の子がたたずんでいた。
もっと年齢は低いかもしれない。


ふと思った。この傘を差し出せば、
その女の子は笑顔で「ありがとう」と言ってくれたかもしれない。


そんなことを考えながら地下鉄駅に着いた。
駅の出口でも、たたずむ少女。
迷った。でも、すれ違う直前の瞬間に判断はできなかった。
階段を下りながら「もう使わないのでどうぞ」
そんな言葉をかけると自然なのかなと思った。でも、もう遅い。


もしかしたら、何かが変わったかもしれない。
でも、一瞬の勇気が足りなかった。
目的地の地下鉄駅を出ると、雨はやんでいた。